「ありとあらゆる産廃がある」と捜査員を驚かせた豊島の廃棄物。2003年から2017年まで、ユンボを使っての掘削・選別、乾燥、島からの搬出、直島での溶融処理というプロセスが続けられました。廃棄物にさまざまなものが混入しているうえ、廃棄物下の汚染土壌が多いために、前処理や溶融自体に困難を抱えていました。
溶融炉の2回にわたる小爆発、掘削現場での火災、大雨による汚水の流出、台風による処分場の水没など予想もしていないトラブルが発生しました。

ゴミの下にゴミが

穴へ埋め込まれたゴミ

国の実態調査で約56万トンとされていた廃棄物と汚染土壌は、掘削が進むにつれて総量の変更をたびたび余儀なくされました。2003年からの処理開始当初は、約67万トンを10年で搬出・無害化処理する計画でした。しかし廃棄物層の下は平坦ではなく穴が掘られ、そこにも大量の廃棄物が埋め込まれていました。そして廃棄物の有害物質は想定していたよりも深くまで土壌を汚染していました。2012年度末の見直しで処理しなくてはならない廃棄物と土壌の総量は推計約93万8千トンにまで膨れ上がりました。

溶融処理の限界と新たな処理方法

汚染土壌の島外への運搬

2012年、処理の必要な廃棄物等の総量がおよそ38万トンも残っていました。直島の溶融炉だけでは調停条項で定められた期限(2016年度末)までに処理しきれなくなり、汚染土壌については福岡県でセメント原料化処理をすることになりました。
新たな処理方法を決めることについては、香川県と住民たちが話し合い、調停条項で定められた溶融・無害化・再利用という基本的な考え方が維持されました。
その後、豊島からの撤去が完了したのは期限間近の2017年3月28日、直島での無害化処理完了は6月12日でした。処理された総量は約91万2千トンと発表されました。また2018年1月には地下水の浄化作業中、取り残しの廃棄物が見つかりました。再調査と撤去が行われ、取り残し廃棄物616トンの処理が完了したのは2019年7月のことでした。
地下水の浄化は、産廃特措法による国の支援が受けられる延長期限2023年3月末までの排水基準の達成が目指されています。2021年4月現在、汚染の揺り戻しが起きるなど、前途多難な状況です。ほかに関連施設や遮水壁の撤去、跡地の形状や整地、さらには地下水を自然浄化により環境基準以下にする課題も残っています。
「わが国初の汚染地修復の国家的取り組み」(技術検討委員会報告書1998~99年)と言われる豊島の原状回復事業は、まだ終わりの見通せない状況です。